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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(オ)1051号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士河村大助、同松本重敏、同河村貢の上告理由第一点について。

民訴二六一条が昭和二三年法律一四九号を以て削除されたこと、一審裁判所が同法律施行後職権をもつて所論各証人の訊問をしたこと、並びに、原判決がそれらの証言を事実認定の資料に供したことは、いずれも所論のとおりである。しかし、右法律一四九号が民訴二六一条を削除したのは、これによつて弁論主義の適用を強化し証拠の蒐集は原則として当事者の発意によることを要し裁判所がみだりに職権を発動してこれをなすべきものでないことを明らかにしたに止まる。それ故当事者の申請に基いて証人訊問のなされる場合、裁判所は当事者の訊問に加え進んで補充的訊問をなし得べきことは勿論(民訴二九四条二、三、四項参照)、一旦訊問の終了した後においても当事者の申請にかかる立証事項の範囲を逸脱しない限り、職権によりその再訊問をなすことを妨げるものではない。しかるところ所論各証人訊問はすべて当事者の申請に基き訊問した証人の再訊問であり、その訊問事項も当事者が訊問を求めた事項の範囲を出でないものであること記録上明らかであるから、原判決に所論の違法があるとはいえない。

同第二点並びに上告代理人弁護士中井武儀の上告理由について。

所論は、いずれも、事実誤認、単なる訴訟法違背の主張を出でないものであつて、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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